技術研究部会

シビルセミナー

2021年08月06日 [ 昭和設計株式会社 渡邉 敦久 ]

『令和元年、ロボット始めました。』
~ 「橋梁点検カメラシステム視る診る」による橋梁点検 ~
[PDF/3,567KB]

平成25 年度の道路法改正を受け、平成26 年度から道路管理者は全ての橋梁、トンネル、道路附属物について5 年に1 度の点検が義務付けられた。ここで、橋梁点検は平成30 年度に1 巡目点検が完了し、平成31 年度から2 巡目点検が実施され、この期間において、効果的な補修を進めていく手掛かりが求められている。橋梁の状態把握は、道路橋定期点検要領 (平成31 年2 月 国土交通省 道路局:(以下点検要領と称す)によれば、定期点検を行う者は、健全性の診断の根拠となる道路橋の状態を近接目視により把握するか、または、『自らの近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができる情報が得られると判断した方法により把握しなければならない。』と留意事項に記述されている。そこで、定期点検のさらなる効率化・合理化を目指し、近年では、様々な新技術を活用した近接目視によらない点検・診断方法への取り組みが各所で始められている。また、AI(ニュートラルネットワークなどの深層学習)を活用した画像解析や計測・モニタリングの技術開発が急速に進んでおり、近い将来は、橋梁点検に要する労力を大幅に低減しつつ、精度の高い点検・診断が可能になると期待されているところである。今回紹介する「橋梁点検カメラシステム」は、点検員が高所作業を行うことなく、点検ロボットを介し得られた情報(高密度画像、打音等)をモニター上で確認し、近接目視と同程度の診断を行うことが可能となる橋梁点検の新技術である。
2021年08月06日 [ 株式会社建設コンサルタントセンター 中嶋 規人 ]

消波ブロックの沈下、どうやって判断する?
~ 3次元点群データを活用した防波堤消波ブロック災害状況調査 ~
[PDF/1,567KB]

特定第3 種漁港である焼津漁港は、国際化への対応や大規模地震津波対策等の課題に対し、効率的かつ重点的な基盤づくりが進められている。このような状況の中、令和元年10 月12 日~13 日にかけて来襲した台風第19 号により、焼津漁港の防波堤及び護岸の消波ブロックが広範囲にわたって被災した。(図-1) 静岡県は、この災害の早期復旧に向け、現地状況の把握及び被災範囲の特定と災害査定用資料作成が急務となった。そのため、まずは被災範囲の特定にあたり、被災認定基準を満たす「消波ブロックの沈下・破損」状況を調査する必要があった。しかし、総延長3.1kmという広範囲にわたり被災した消波ブロックを直接測量することは、危険を伴い時間も費やすことから、災害査定に間に合わない可能性が高かった。そのため、短時間で可能な調査方法を決定することが課題であった。本業務では、これら課題の解決策として、「水上部をUAV 写真点群測量、水中部をナローマルチビーム測深により計測した3 次元データ」と、「台帳断面図を基に作成した被災認定基準面の3 次元設計データ」とを比較する方法を採用し、結果として早期に被災範囲を特定し被災状況を把握することができた。以下では、防波堤消波ブロックの災害時における、ICT 技術を活用した被災状況調査の有効性について報告する。
2021年08月06日 [ 服部エンジニア株式会社 田川 雄之 ]

新技術を身近な技術にするために求められること
~ 三次元点群データの活用を例として ~
[PDF/2,055KB]

近年AI や ICT 技術 等の 計測やデータ処理・解析手法に関わる 新技術 の発展に伴い 測量や建設コンサルタント業界においても これら 新技術を活用していくことが強く望まれているしかしながら様々な新技術が存在する中 全ての新技術を取り入れることは困難であり 限られた人的資源や時間的制約の中で新技術に対応するためには 各々の新技術が市場に与える影響 の大きさを見極める ことが 必要となる その上で市場に与える影響が大きいと考えられる新技術については それらの活用を どのよう に促進していくか 言い換えれば「新技術をいかに身近な技術としていくのか」が重要であると考える
2021年08月06日 [ 株式会社フジヤマ 鈴木 寛人 ]

ニューノーマル時代に向けた新しいまちづくりの取組み
~ AIカメラを使った混雑度の自動把握と情報発信システムの運用 ~
[PDF/1,032KB]

本稿では,屋外レジャー空間において感染症拡大防止策を実施した事例を報告する。2020 年夏,熱海市の海水浴場開設に係る新型コロナウイルス感染症予防対策として,人流を自動感知できる人工知能を搭載したネットワークカメラ(以下,AI カメラ)での観測結果から混雑度を分析し,来場者等に向けた情報発信を行った。また,観測精度の検証及び情報発信の有効性までを検証した(図1)。対象地は,熱海市内の海水浴場のひとつ,国道135号沿いに位置する熱海サンビーチである。JR 熱海駅から徒歩15 分と首都圏からのアクセス性に優れた立地で,ホテルが立ち並ぶ市街地に隣接する(図2,写真1)。海水浴場の規模は汀線400 m,浜幅60 mであり,2019年は約18 万人の利用があった。当時,感染症拡大の影響から神奈川県と千葉県のすべての海水浴場が開設を断念したことで,特に関東近郊からの行楽客が熱海市内の海水浴場に集中する懸念が高まっていた。熱海市は『熱海市海水浴場等における新型コロナウイルス感染症の感染症防止対策ガイドライン(令和2 年7 月9 日)』等に基づき,2020 年の海開き期間である7 月23 日から8 月23 日において徹底した対策を行った。その一策として,インターネット等を通じた混雑情報の発信から,事前に利用集中の注意喚起をすることで,密集を避けることのできる仕組みを構築した。本報告は,AI カメラによる混雑情報発信の取組みとその有効性を紹介する。
2021年08月06日 [ 株式会社東日 池谷 卓美 ]

道路防災点検業務の現状と今後について
~ 「防災カルテ」の有効的かつ効率的活用をめざして ~
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静岡県における道路防災点検は平成2年度、平成8年度その後平成24年度に実施され、現在は平成24年度~平成26年度に作成された防災カルテを用いて更新点検が継続されている。今後はこれまでの道路防災点検業務の成果を有効的に利用し、不足を補ったり工夫を凝らしたりして、道路に係る災害防止を図る必要がある。本稿では現状の道路防災点検業務の内容と防災カルテの今後の有効的かつ効率的活用について述べる。
2021年08月06日 [ 不二総合コンサルタント株式会社 根来 琢磨 ]

自助意識向上による逃げ遅れゼロを目指して
~ 住民避難実効性向上のためのマイ・タイムライン作成 ~
[PDF/2,983KB]

平成30年7月豪雨では西日本から東海地方にわたる記録的な豪雨による洪水や土砂災害の発生により 2 00 名以上の 犠牲 者を出す甚大な被害をもたらした 。 岡山県倉敷市 真備町 では一級河川 小田川 の 洪水浸水想定区域と実際の浸水範囲がほぼ一致していたにもかかわらず 5 1名が死亡している 図 1.1参照) 。事前に洪水予報や避難指示など 最大級の警戒が 各方面で 呼び掛けられていたにもかかわらず こうした 情報が住民の避難行動に結び付かなかったことが大きな被害を生じさせた一因と指摘されている。上記の教訓を受けて 静岡県では 「 住民避難実効性向上検討委員会 」 を 設置し 平成 31 年 4 月に 「住民避難の実効性の向上に向けた提言 書 」 を策定した 。この主たる目的は, 行政からの避難に関する情報の確実な伝達と 住民が 災害関連 情報を正しく理解・判断し避難できる ための具体策について検討 結果を取りまとめることであった 。その具体策の一つ として 「 地域の議論を踏まえた住民等自 らによる避難行動計画(マイ・タイムライン)の作成 」 の推進 が挙げられている。本稿 では 静岡県内のモデル地区におけるマイ・タイムライン検討会(ワークショップ )の実施支援を行い 検討方法や実施方法などについて手引書としてとりまとめた事例について 報告 する ものである 。
2021年08月06日 [ 株式会社東海建設コンサルタント 高野 倖平 ]

女性や子供が安心して使える災害時用トイレのあり方
~ 衛生面に配慮した災害時用トイレの計画・設計 ~
[PDF/372KB]

(1)避難所の概要 平成7 年の阪神・淡路大震災、平成16 年の新潟県中越地震、平成23 年のの東日本大震災、平成28 年の熊本地震など、わが国では5 年から10 年の周期で大きな震災が発生している。記憶に新しい熊本地震では、少なくとも熊本市内のみで11 万人(市民4 人に1 人)が避難施設等に避難している。写真1-1.阪神・淡路大震災災害対策基本法における避難所等は、概ね下記の二つに分類される。図1-1.災害対策基本法による分類上記のうち、指定緊急避難場所は、住民等が災害から命を守るため、緊急的に避難する施設又は場所を言い、災害の種別ごとに避難場所が指定されている。一方、指定避難所は、避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させること。または、災害により家に戻れなくなった住民を一時的に滞在させるなど、基準に適合する公共施設等が指定されている。本稿では、後者の指定避難所(以降、避難所と称する)における災害時用トイレのあり方、伊東市における事業方針および設計事例について詳述する。(2)避難所の課題 震災時等において、多くの市民に利用される避難所には、多くの課題を抱えている。熊本地震の利用者実態調査では、断水でトイレが使えなくなったことや、仮設トイレにおける臭いと衛生面などが大きな問題となっている。このような問題は、時間の経過とともに更に状況が悪化するため、避難所を利用している多くの人は、水分摂取や食事を控えたりして、トイレの使用を我慢する傾向がある。その結果、避難所において体調を崩す人が多くなるなど、衛生面の悪化により健康面での課題も併せて発生している。
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